リスクを減らすために、分散したポートフォリオ(資産配分)にしたいけど、どの資産を組み合わせたらいいの?
そのような疑問をお持ちの方へ、丁寧に解説する記事となります。
この記事を読んでいただければ、
各資産同士の相関係数が分かるとともに、
リスクを減らすためには、どのようなポートフォリオ(資産配分)が望ましいかが分かるようになります。
私自身、自分の持っている資産同士の相関係数が知りたいと思ったものの
JPモルガンアセットマネージメントより発表されている各資産同士の相関係数では、
知りたい資産が入っていなかったため、自ら相関係数を算出しました。
相関係数を調べた資産は、下記になります。
・S&P500
・全世界株式VT
・新興国株式VWO
・ナスダックQQQ
・米国中小型株VXF
・ラッセル2000 IWM
・日本株式TOPIX
・中国株式FXI
・インド株式SENSEX
・セクターETF VGT/VHT/VDC/XLRE
・半導体ETF SMH
・債券AGG/TLT/IEF
・金GLD
・金鉱株GDX
・ドルインデックスDXY
・仮想通貨BTC
相関係数とは
相関係数は、ー1~+1までの間の値をとります。
この相関係数が、
+の場合は、正の相関、
―の場合は、負の相関があります。
また、相関係数(絶対値)が
1に近いほど相関が強く、
0に近いほど相関関係が薄いことを示しています。
出典:Try iT
また、下記表は
相関係数とその判断目安を示しています。
相関係数 | 相関の判断目安 |
0.8以上 | 強い正の相関あり |
0.6~0.8 | 正の相関あり |
0.4~0.6 | 弱い正の相関あり |
ー0.4~0.4 | 相関なし |
ー0.6~ー0.4 | 弱い負の相関あり |
ー0.8~ー0.6 | 負の相関あり |
ー1.0~ー0.8 | 強い負の相関あり |
この相関係数は、株式投資の世界でも活用することができます。
「負の相関同士」や「相関係数が0に近いもの」を組み合わせることで、
変動を抑える(リスクを抑える)ことができるのです。
(特に、負の相関同士を組み合わせるのが、効果的です)
相関係数の算出方法
自ら相関係数を算出したため、
「正しく算出できているの?」
と疑っている方もいらっしゃるかもしれませんので、算出手順を説明します。
算出手順はどうでもいいという方は、資産(ETF)一覧まで読み飛ばしてください。
資産(ETF)の一覧まで読み飛ばす
手順① データを抽出
Investing.comより、毎月の株価データを抽出プリング
毎月とした理由
毎日/毎週の場合、必要以上にミクロの影響を拾ってしまい、マクロの影響を見れない可能性がある。
毎年の場合、データ数が少ないため、相関係数を正しく算出できない可能性がある。
⇒毎月がちょうどいいサンプリング間隔と推測。
手順② 各月の変動率を算出
算出手順①で抽出したデータより、
当月始値→翌月始値で、各月の変動率を算出。
手順③ 各資産同士の相関係数を算出
算出手順②で求めた各月の変動率から、
相関係数を求める「CORREL関数」で、各資産同士の相関係数を算出。
このときデータ数は、下記2パターンで実施
1.直近5年間(2016/4~2021/3)
2.全期間(各資産ごとで年数が異なり、長い方に合わせて算出)
※各資産のデータ期間は、資産(ETF)の一覧で記載
上記方法で求めた相関係数と、
JPモルガンアセットマネージメントが公表している相関係数で、
重複している部分を比べると、ほとんど差がなかったため、正しく算出できていると思います。
資産(ETF)の一覧
今回、相関係数を算出するにあたり、使用した資産(ETF)の一覧を下記表に示します。
ナスダック(QQQ)、情報技術セクター(VGT)、半導体ETF(SMH)は、
シャープレシオが大きいことが分かります。
シャープレシオとは、「リターン」/「リスク」で算出される値です。
大きいほど、投資効率(リスクのわりにリターン)が良いことを示します。
資産 | ティッカー シンボル (指数) |
経費率 | 配当 利回り |
過去5年 年率 リターン |
過去5年 シャープ レシオ |
サンプリング期間 |
全世界 株式 |
VT | 0.08% | 2.26% | 14.0% | 0.9 | 13年 |
新興国 株式 |
VWO | 0.10% | 2.28% | 12.4% | 0.8 | 16年 |
米国大型 S&P500 |
SPY | 0.09% | 1.60% | 16.4% | 1.1 | 26年 |
米国新興 ナスダック |
QQQ | 0.20% | 0.71% | 25.3% | 1.5 | 19年 |
米国中小 型株式 |
VXF | 0.06% | 1.76% | 19.5% | 0.9 | 11年 |
米国小型 株式 |
IWM | 0.19% | 1.01% | 18.2% | 0.8 | 21年 |
日本株式 | TOPIX | ー | ー | 8.7% | 0.6 | 17年 |
中国株式 | FXI | 0.74% | 2.84% | 10.7% | 0.7 | 16年 |
インド 株式 |
SENSEX | ー | ー | 16.7% | 0.8 | 18年 |
情報技術 セクター |
VGT | 0.10% | 0.77% | 29.1% | 1.6 | 17年 |
ヘルスケア セクター |
VHT | 0.10% | 1.55% | 14.5% | 1.0 | 11年 |
生活必需品 セクター |
VDC | 0.10% | 3.62% | 8.1% | 0.6 | 17年 |
不動産 セクター |
XLRE | 0.12% | 4.78% | 8.5% | ― | 5年 |
半導体 | SMH | 0.35% | 0.65% | 35.6% | 1.7 | 5年 |
米国 総合債券 |
AGG | 0.04% | 2.00% | 3.3% | 1.0 | 17年 |
長期 米国債券 20年超 |
TLT | 0.15% | 1.51% | 3.6% | 0.3 | 16年 |
中期 米国債券 7~10年 |
IEF | 0.15% | 0.74% | 2.8% | 0.5 | 14年 |
金 | GLD | 0.40% | 0% | 6.2% | 0.4 ※2 |
16年 |
金鉱株 | GDX | 0.52% | 0.57% | 11.2% | 0.4 ※2 |
15年 |
ドル インデックス |
DXY | ー | ー | ー | ー | 26年 |
仮想通貨 | BTC | ー | ー | 172% | 1.2 | 11年 |
※1 上記データは、2021/3現在
※2 5年データがないため、3年データで代用
相関係数の一覧表
左下は全期間(上記表のサンプリング期間で最長26年)、
右上は直近5年より算出した相関係数です。
全期間と直近5年間の数値を比較すると、
直近5年間の方が、若干相関係数が高まっていますが、大きな差はありません。
全世界株式/米国株式(S&P500など)と逆相関にある資産は、
長期米国債券(TLT)、中期米国債券(IEF)です。
また、
全世界株式/米国株式(S&P500など)と相関がない資産は、
金(GLD)、金鉱株(GDX)、仮想通貨(BTC)です。
上記資産(TLT、IEF、GLD、GDX、BTC)を組み込むことで、
分散させた(リスクを抑えた)安定感のあるポートフォリオになります。
特に米国長期債券(TLT)は、米国総合債券(AGG)/米国中期国債(IEF)と比べて
リスクが大きく(変動が大きく)、シャープレシオは低いので、一見悪いように見えます。
しかし、
株式もリスクが大きいので、株式の逆相関の関係にある債券で、
株式の変動を相殺させる(リスクを小さくする)には、
むしろリスクの大きい米国長期債券(TLT)の方が良いと思います。
長期米国債券ETFを使った高リターン&低リスクのポートフォリオを紹介しておりますので、下記リンクより、是非みてください。
レイダリオのオール・シーズンズ・ポートフォリオ戦略
先ほどの相関係数を用いて、どのようなポートフォリオが良いかを説明する前に、分散を徹底しているプロの投資家の例を、ご紹介します。
レイ・ダリオ氏が率いるブリッジウォーター社では、
個人投資家に対して「オール・シーズンズ戦略」というものを提唱しています。
オール・シーズンズとは、
分散を徹底し、どのような経済環境下でも安定的な収益を上げるポートフォリオです。
■全天候型ポートフォリオの例
・株式(S&P 500もしくは他のインデックス)…30%
・米国長期国債(TLT):40%
・米国中期国債(IEF):15%
・金:7.5%
・商品取引(コモディティ):7.5%
債券の比率がとても大きいことが分かります。
株式は、たった30%しかありません。
分散重視の推奨ポートフォリオ(独自意見)
前述の全天候型ポートフォリオをベースにして、
相関係数を用いて、独自に改良した推奨ポートフォリオを示します。
リスク許容度が高い人と、低い人で最適なポートフォリオは異なりますので、
それぞれ分けて記載しております。
資産 | リスク許容度 高い人向け |
リスク許容度 低い人向け |
全世界株式 VTなど |
40% | 30% |
米国中小型株式 VXF |
10% | 10% |
新興国株式 VWO |
10% | 5% |
ナスダック QQQ |
10% | ー |
半導体 SMH |
5% | ー |
情報技術 VGT |
ー | 5% |
ヘルスケア VHT |
ー | 5% |
生活必需品 VDC |
ー | 5% |
米国長期国債 TLT |
20% | 35% |
金 GLD |
ー | 5% |
金鉱株 GDX |
5% | ー |
ポイント① 地域分散を徹底
全世界株式を中心として、さらに比率の少ない新興国株式を追加。
ポイント② 規模の分散を徹底
全世界株式など時価総額加重平均の場合、中小型株が占める割合が極端に小さいです。
そのため、米国中小型株のVXFを10%程度追加。
しかも、VXFはS&P500を上回る実績がある。
ポイント③ 債券は米国長期国債(TLT)のみ
前述のとおり、株式との変動の相殺が期待できる米国長期国債(TLT)のみで、
他の債券は、ポートフォリオに組み込みません。
ポイント④ 債券比率を低めに設定
近年、債券利回りが低いため、債券比率を低めに設定。
しかし、米国30年債利回りが3%(目安)まで上昇したら、必ずTLTをポートフォリオに組み込む必要あると思います。
ポイント⑤ グロース株を多めに設定(リスク許容度の高い人向け)
リスク許容度の高い人は、ナスダック10%、半導体ETF5%などのグロース株を、
トッピングするのが望ましいと思います。
(あくまでトッピングの位置づけで、ポートフォリオの核としてはいけません)
ポイント⑥ セクター分散&リターン向上(リスク許容度の低い人向け)
リスク許容度の低い人は、情報技術/ヘルスケア/生活必需品セクターへ、
均等投資することを推奨します。
■3つのセクターへの投資を推奨する理由
・3つのセクターは、互いの相関係数が小さく、分散できている
・3つのセクターは、過去リターン15年のリターンが、S&P500を上回っている
ポイント⑦ 金/金鉱株はおまけ程度
金や金鉱株は、長期的なリターンを期待できませんので、5%程度で十分です。
(投資しなくても可)
※仮想通貨(BTC)は、価値の不確かさがあるため、ポートフォリオに入れませんでした。
まとめ
いかがでしたか?
各資産同士の相関係数や分散重視のポートフォリオの考え方について、知ることができたでしょうか?
株式のリスクを減らすには、
逆相関の関係にある長期米国債券(TLT)を、ポートフォリオに組み込むのが効果的です。
あわせて、下記の記事も読んでいただけると、ポートフォリオ構築の参考になるかと思います。
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